つしまの魅力や思いをきいてみたVol.3(堀田正裕さん)
全国に約3,000社の分霊社がある津島神社。疫病除け、厄除け、災難除けにご利益がある神社です。古くは「津島牛頭天王社」と呼ばれ、現在も「津島のお天王さま」と呼ばれて多くの参拝者に親しまれ、年間約100万人がこの神社に訪れます。また、戦国時代に活躍した武将の織田信長や豊臣秀吉は、津島神社と関わりが深い人物として知られています。
今回インタビューに応じてくださいました堀田さんは、2019年に津島神社の宮司に就任し、津島神社の最高責任者として、祭事の執り行いや神社の維持管理を行っておられます。また、文化財の保護活動にも力を入れられており、文化財所有者としての立場から、津島市歴史的風致維持向上協議会の委員の1人として、津島市の歴史文化のまちづくりの発展のためにご尽力いただいています。
生まれも育ちも津島市で、この地域の歴史や伝統文化を守り育て、次世代につなげていく取り組みを積極的に行っている堀田さんに、インタビューを行いました。
歴史と伝統文化があるまち
私は生まれも育ちも津島市で、今まで津島市を特別な目で見ることがありませんでしたが、2019年に津島神社の神職として戻ってきたときに、改めて津島市の歴史と伝統文化の魅力をアピールしたいと思いました。津島市は四季を感じられるまちで、天王川公園では桜や藤など、季節の花を見ることができます。また、津島市は交通の便が良く、名古屋市内まで電車に乗って30分程度で行くことができます。自動車についても、3時間かければいろいろな場所に行くことができます。他にも、名古屋市などの近隣市町に比べて物価が安い、子育てがしやすい環境が整っているという魅力があります。
当市では津島神社も重要な観光資源で魅力的なスポットの1つだと思いますが、津島神社の歴史について教えてください。
津島神社の創始は西暦540年で、全国的に見ても珍しい大変古い歴史のある神社です。飛鳥京跡苑池遺構から出土した木簡には「海評津嶋(あまのこおりつしま)」と記されており、「津嶋」という「五十戸(さと)」があったことが分かります。そのため、当時すでに津島にまちがあったことは間違いありません。
16年後の2040年には、津島神社は創始1,500年を迎えます。この創始1,500年に向けて、尾張地方の「尾張造」が国の文化財指定を受けるための活動に取り組んでいます。津島神社の社殿は全体が独立して残っている唯一の尾張造の御社であり、文化財としてより広く知ってもらうためにアピールをしていかなければいけません。
先ほど話した「尾張造」のような400年前の景観が今でも体験できるところが津島神社の魅力だと思います。津島神社やその周りを囲んでいる御社は江戸時代から続いている景観です。お蔭参りの時代には、現在よりも交通手段が発達していない中、1日に数万人の参拝者が歩いて津島神社を訪れていました。神社を訪れた人が何を感じるかは人それぞれあると思いますが、400年前にここを訪れた人が何を考えていたのかを想像してみるのも1つだと思います。
尾張造の他に、どのような文化財保存活動を行っているか教えてください。
津島が生んだ茶道家、伊藤才兵衛さんが手がけた茶室の保存にも取り組んでいます。この茶室は津島神社の参集所の中にあり、私自身も、幼稚園児の時に伊藤才兵衛さんのところに遊びに行った記憶があります。伊藤才兵衛さんの茶室を保存することで、津島のお茶の文化を継承していきたいです。津島市内にあるお茶屋や和菓子屋は昔と比べてかなり減ってしまいましたが、茶室の保存が需要の創出につながるのではないかと考えています。
数年前から津島神社南門付近の手水に季節ごとに色とりどりの花が飾られており、話題になっています。「花まいり」について教えてください。
「花まいり」は、新型コロナウイルス感染症が流行して手水ができなくなった時期に、巫女さんの発案がきっかけで始まりました。感染症の流行が落ち着いたあとも、毎月1日と15日を中心に引き続き実施しています。また、津島神社の公式インスタグラムについても、巫女さんが主体となって運用しています。若い女性たちが興味のあることが話題にされやすいということからも、歴史や伝統を大切にしながら新しい風を積極的に取り入れていきたいです。
同じく注目を集めている1日限定御朱印というものがありますが、この御朱印のデザインについて教えてください。
津島神社では、正月を除いた毎月1日に限定の御朱印を頒布しています。この御朱印は一昨年から始まり、私が毎月季節に合わせたデザインの絵を描いています。元々絵を描くことが趣味だったこともあり、月に100枚限定という中で、1枚あたり2日ほどかけてデザインの絵を制作しています。また、昔は1日にその月の健康を祈るためにお参りするという風習があって、その風習を思い出してもらうきっかけづくりとして1日限定御朱印を始めました。
活動や取り組みを通じた津島市への思いについて教えてください。
私自身、いろいろな活動をしている中で、行政しかできないことが結構多いと感じています。ぜひ行政の方から市民や団体の声を吸い上げてアピールしてほしいです。例えば、津島市内にはたくさんのお寺があります。以前は宗派の違いから、お寺が一緒になって何か事業を行うことはあまりありませんでしたが、人口減少や檀家の減少などの理由から、お寺側も危機感を持って事業に参加するようになりました。しかしながら、一つひとつのお寺がアピールをしても、なかなか上手くいかないのが実情です。行政にはそのあたりを手助けしてほしいです。
今後津島市がどのようなまちになってほしいかを教えてください。
津島市には若い人が働きやすい、住みやすいまちになってほしいです。人口が減っていく中でも、若い人たちに興味を持ってもらえる土台が津島市には十分あると思います。そのために、他の自治体と比べて劣っている部分は改善して、魅力的な部分はもっとアピールして伸ばしていくべきです。行政には、皆が何に興味を持っているのかをしっかり考えて、時代の変化に応じてもう少し先を見据えた動きを取ってほしいと思います。
創始1,500年を迎えるにあたり、「尾張造」の国の文化財指定に向けて動いていくことが私の役目です。創始1,500年を迎える頃には、私は90歳で現職を退いているだろうと思いますが、今のうちに次の世代への道筋を作って、これからを若い人たちにつないでいきたいです。また、津島神社の若い神職が働きやすく、やりがいを感じられる職場を目指しています。神社という職場では、大抵宮司が60歳以上、巫女さんが10代から20代と、大きな年齢の差があります。新しい風を取り入れながら、若い人の主体性を活かして新しいことをやっていってほしいと思います。